2017年8月27日日曜日

8月GPS「弁護士さんに聴いてみよう!」前編

(次回9月のGPSのお知らせはこちらをごらんください)

亮佑です!

この前8月5日(土)に行った、「弁護士さんに聴いてみよう!」。
札幌弁護士会所属の須田布美子先生にお越しいただいて、
ゲイにまつわる法律的なあれこれを、聴いてみました。
今回はせっかくなので文字起こしして、
参加してない方にも読んでもらいたいなーと思います。
1時間の内容の文字起こしなので、ちょっと長いんですが、
ゆっくり読んでもらえたらと思います。

今回は前編です。ではどうぞ〜。


〜〜〜〜〜
亮佑(亮)「弁護士さんに聴いてみよう!これって法律的にOK?NG?」


(拍手)


亮「ゲイの世界の、あれヤバくね?というものが、ホントにヤバいかどうかを聴くために(笑)弁護士さんに実際に聞いてみよう!という企画です。
 今日来ていただいた弁護士さんはこちら、須田布美子先生です!」


(拍手)


亮「須田先生は、6月に始まった札幌市のパートナーシップ宣誓制度を作る活動をしてた『ドメスティックパートナー札幌』という組織で、ものすごーく活躍されてました!  
 須田先生は、ご専門は何なんですか?」 


須田布美子先生(須)「基本的にはなんでもやります。家事事件が多いですね。離婚と相続で7割です。」 


亮「なるほど。男女の痴情のもつれを、たくさん見ていらっしゃるわけですね(笑)。
 先生が、LGBTの当事者に関わるようになったきっかけはなんですか?」 


須「もともと女性に対するDVの被害者支援をやってたんですね。それで、行政の担当者に対する研修とかをやっていたんです。  
 そしたら、DVの保護命令、暴力を振るった夫は、暴力を振るわれた妻に近づいてはいけないというものですが、その法が改正されて、『配偶者』という言葉がなくなったんですね。同棲しているカップルには使えるとなった。  
 そのときに『ゲイとかレズビアンのカップルでも使えるんですか?』と聞かれて、私、答えられなかったんですよね。  
 それで、弁護士会の中で勉強会をはじめたり、当事者の方に会ったりしていろいろ勉強してましたが、気がついたらここにいます(笑)」


亮「ステキですねー(笑)今日はいろんな質問についてお答えいただこうと思ってます。
  よろしくお願いします。」


須「よろしくお願いします。」 




エロ画像や動画、出すのもリツイートも犯罪?? 




亮「ツイッターとかで、自分の局部とか出してる人がいるじゃないですか。オナニー画像とか、セックスしている場面をそのままモザイクなしで流してる動画とか。あれって犯罪ですよね?」


須「犯罪です。」 


亮「具体的にはどんな犯罪なんですか?」


須「刑法に『わいせつ物頒布(はんぷ)罪』ってのがあるんですよ。頒布。『配る』という意味なんですが、今はわいせつな電磁的記録の送受信も処罰されるんですよね。わいせつ物を陳列したという扱いになるんですよね。」 


亮「じゃ、ツイッターとかにあげているのは、わいせつ物を電磁的方法で頒布してるということになるんですね?」


須「ちょっとむずかしいところなんです。 
 ホームページにUPしたら、わいせつ物の陳列にあたるんですけど、電子メールでいろんな人に送ったら、それはわいせつ物の頒布になるんです。 
 一方で、ツイッターは、陳列なのか頒布なのかの判断が、けっこうむずかしいんですよね。実際に処罰されてる人が、どんな罪で処罰されてるかわからないんですけど。」 


亮「実際に処罰されてる人はいるんですか?」


須「私自身は担当したことはないんですけど、処罰されている人は実際にいます。
 今は警察に『サイバーパトロール隊』がいるんですよ。なので、ツイッターでも、ある程度特定はできます。」 


亮「画像のモノが誰のモノかがわかる(笑)」 


須「いや、誰のモノかまではわかんないんですけど(笑)。画像や動画を、誰が出したかはある程度特定できます。ホームページにUPしたり、ツイッターやSNSで流したりしたら、処罰の対象になります。」 


亮「で、気になってたんですけど、画像とか動画に『いいね』とかリツイートした人も、犯罪になるんですか?」 


須「リツイートは、画像や動画の『再掲示』になるので、陳列罪になります。」 


亮「『いいね』はどうですか?」 


須「単なる『いいね』は、犯罪にはならないと思います。  ただ、リプライを送って『いいねいいね!もっとやれ!ほかのないの?』とか、投稿者をあおる行為があると、それは、わいせつ物陳列の教唆(きょうさ:そそのかす)にあたります。」 


参加者(参)「最近ツイッターで『いいね』すると、他の人のタイムラインにも表示されたりするじゃないですか。あれは頒布にならないんですか?」 


須「どうかなぁ…。『いいね』を押すときに、みんなに見られると思って押したら、頒布や陳列として処罰される可能性はあるかもしれないですが、どうでしょうね。」 


亮「なるほど」


須「ところでこの犯罪は、どれぐらいの罰になると思いますか?」 


亮「罰金50万ぐらい?」 


須「そんなに甘くないです。  
 一応刑法では、2年以下の長期または250万以下の罰金、または併科、併せて科すということになってます。  
 もちろん1回あげただけ上限の250万の罰金ということはないですと思います。上限というのはかなり悪質な人に該当すると思います。ただ、繰り返しやっていると実刑もありえるということです。」 


参「たとえば海外の人がツイッターにあげてる画像とか動画をリツイートする人がいたら、リツイートした人だけが罰せられると言うことですか?」 


須「海外でUPされたものについては、日本法が適用されないので、リツイート分だけ処罰されます。」 


参「ツイッターはアメリカのモノじゃないですか?」 


須「ツイッター社はアメリカですが、日本語で、日本国民が見られる状況で、日本人に向かって公開されているものについては、日本法が適用されます。」 


亮「なるほど。ツイッターでは、特に若い子たちがフォロワーを増やしたい気持ちで、性器の画像や動画をあげていることが多いと思うので、やめたほうがいいですね」 


須「そうですね。気をつけた方がいいと思います。」 




成人男性が中高生とセックスすると…? 




亮「成人男性が、中高生とセックスをすると犯罪ですよね?」


須「犯罪です。」 


亮「あれは何を根拠に犯罪になるんですか?」 


須「刑法上には根拠はないんです。条例です。  
 法律は国会で決めているので国全体に適用されますが、条例は一部の地域だけ、北海道の条例なら北海道だけということです。  
 これに関しては、いわゆるインコウですね」 


亮「淫行?」 


須「はい。  
 18歳未満の子と、誠実なおつきあいもないのに、性的な関係を持つということは、『北海道青少年健全育成条例』という条例によって、処罰されます。」


参「ホントに18歳になった瞬間に大丈夫なんですか?  
 ネットで見たら青少年って18歳未満って書いてあったんですけど、高校在学中ならどうなんですか?」 


亮「いま質問してくれた彼は高校3年生で、もうすぐ18歳になるんですけど(笑)」 


須「そうですか、いろんな出会いについては注意深くしてほしいですが(笑)。  
 犯罪というのはもともと、すごく厳格に定められているんです。この条例では、18歳未満が対象なので、18歳になって1日でも越えたらこの適用外です。  
 ただ18歳になったと言っても、18歳になる前からつきあっていたのなら、その前の部分が消えるわけではありません。その前の部分については犯罪です。」 


参「高校在学中でも関係ない?」 


須「『北海道青少年健全育成条例』が犯罪としているもの、という意味では、高校生かどうかは関係ないです。」 


参「例えば、17歳同士とかなら?」 


須「一応理屈としては条例違反ですが、双方とも犯罪者であり被害者ですから、通常は処罰されないです。  
 ただあまり年の差がある場合は、非行と見なされる可能性はあります。少年なので家庭裁判所が関与する話にはなりうると思いますが、通常はなにもされないです。」 


亮「高校生同士がつきあってても、つかまりませんもんね。…では、この条例で処罰される時って、具体的にはどんなときなんでしょうか?」 


須「え…成人と中高生が関係を持っているところが見つかったとき、ですかね。」 


亮「見つかったとき、ですか。」 


須「それこそサイバーパトロールで見つかりますよ。ネットに出してたりするじゃないですか。  
 ネットを見張っている警察がいるので、あからさまに書くと削除されるからぼやかして書いてますよね。  
 でも警察は見たら、同性同士だろうが異性同士だろうが、そういう関係なのはわかりますよ。」 


亮「なるほど」 


須「知っておいてほしいのは、高校生同士でも、大人と高校生の関係でも、真剣なおつきあいなら、この条例は関係ないんです。あくまで淫行を処罰する条例なので。  
 おつきあいする気持ちもなく、誠実な気持ちもなく、ただ性欲だけでやっちゃったというのを処罰するんですよね。」 


亮「はぁ……。でも、真剣なおつきあいって、何でしょうね?(笑)」 


須「そうなんですよ。そこがけっこうむずかしいんです。同性婚が認められてない中で、男性同士のおつきあいを、どのように真剣なおつきあいを見なすかは課題です。  
 男女の場合はわかりやすいんです。『結婚の話が出ていたかどうか』。これがけっこう大事です。」 


亮「そうですかー。札幌市のパートナーシップ制度も20歳以上からじゃないと宣誓できませんから…。」


須「使えませんねぇ…。」 


亮「真剣なつきあいをしてました!って、言ったもん勝ちということなんでしょうか?(笑)」 


須「いや、言っただけでは認められないです。警察は捜査しますから。  
 メールやLINEのやりとりなどをいろいろ見て、将来までずっと考えているような、お互いの真剣な恋愛感情がそこにあって、その先に性的な関係があった、ということだったら、育成条例違反とはならないんです。青少年の健全育成のための条例なので。」 


亮「なるほど。」


須「では、この条例を違反した時の、罰はどれくらいでしょうか。」 


亮「うーん、懲役3年ぐらい?」 


須「この条例の罪には、淫行そのものの罪と、淫行を教える見せる罪、と2つあるんです。  
 自分が淫行するのは罰が重いんです。2年以下の懲役か100万円以下の罰金です。
 ですが、淫行を教えたり見せたりすると1年以下の懲役か50万円以下の罰金です。」 


亮「淫行を教えたり見せたりっていうのは具体的にはどういうことですか?  
 やってるところを見せるとか?やってみせろと言うとか?」 


須「別の犯罪にも絡むんですが、たとえば若い子を連れてきて、お金をあげるから、ここでマスターベーションをしてほしい。それを僕が録画するから、というのになると、青少年健全育成条例違反になるほかに、児童ポルノ法違反になります。」 


亮「あー児ポルですね〜。」 


須「児ポルは画像や動画を持ってるだけで犯罪なんです。1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。これは条例ではなく法律なので、全国どこでも犯罪になります。」




 「ゲイだとばらすぞ!」と言われたら… 




亮「『お前はゲイだと学校や職場にばらすぞ!』と言われたとき、まあ言われたことがある人はあまりいないかもしれませんが、誰にもカミングアウトしてないと、誰にも相談できなくて困っちゃうと思うんですが、こういうときは弁護士さんに相談した方がいいんでしょうか?」 


須「これはもう、ぜひ相談してください。  
 もしそう言われて、お金を取られたとなったら、立派な恐喝の既遂(きすい)になります。10年以下の懲役です。公判請求がされると、必ず有罪なら懲役判決。あとは執行猶予がつくかどうか。」 


亮「え!そんなに重い罪なんですか。」 


須「でも、わりと簡単にやっちゃうんですよね。若い子は。」 


亮「つきあっていたカップルが、円満でなく別れて、その腹いせになにかやりたくて脅すとか。実際にばらされるということも、あるかもしれないですよね。」 


須「ばらすぞと言われた段階で、弁護士に言ってくれたらいいと思うんですね。弁護士への法律相談…当事者の方はなかなか来てくださらないんですが(笑)件数は多くはないんですけど、アウティング(=ゲイだとばらされること)系の脅迫や恐喝は、弁護士が関わりやすい。これは明らかな犯罪ですから。 
 そして、やってる人に弁護士から、『あなたがやってることは犯罪です。やめてください。やめなければ警察に言います』っていうと、ぴたっと止まることが多いんです。」 


亮「そんなんで止まるんですか?」 


須「やっぱりまずいと思うんじゃないですかね。  
 例えば相手がネットで知り合って、どこの誰だか全然わからない、という状況だとむずかしいんですが、学校や職場の人など、知っている人がやっているなら、通知一本で止まることがあります。なので、弁護士に相談してもらったらいいと思います。」 


参「それは書面ですか」 


須「そうですね。住所を知らないということもあると思うので、メールで送るときもあります。」 


参「内容証明郵便とかですか?」 


須「内容証明郵便は、郵便を出したことを後から郵便局が証明してくれるということだけなので、このようなときは内容証明じゃなくてもいいです。」 


亮「へー。」 


須「あと、勝手にばらされたような場合は、いま刑事処罰の話しかしてませんが、法的な責任というのは刑事責任と民事責任があるんですね。民事というのは、私とあなたの関係で起こった問題に対してのことなんですが。」 


亮「ここでいうと、ばらした方とばらされた方ですね。」 


須「そうです。刑事処罰とは別に、ばらされた方が、私は傷ついたから、民法上の不法行為があるとして損害賠償として慰謝料を請求する、というのはできると思います。」 


亮「あー慰謝料」 


須「刑事処罰というのは、実はハードルが高いんですよね。 
 それに比べて民事というのは、私とあなたが言い分を争うということなんです。慰謝料が認められるかは別ですが、訴えることはできます。 『ばらすぞ』と言われてお金を請求されるのは、脅迫恐喝になるわけです。
 その一方で、ばらされ方によっては『名誉毀損(めいよきそん)』になるんです。刑事裁判で処罰されなくても、ばらされたことによって私は傷ついたんだから、お金でつぐなってほしい、という、慰謝料請求はできます。」 


亮「たとえば『亮佑は若い子を集めて区民センターでみだらなことをやっている』とか書かれちゃったら(笑)、それは名誉毀損で訴えられるんですか?」 


須「できます。今のは名誉毀損なんです。それとは違って『あいつオカマだよ』ってのは、全くジジツのテキジがないものは、侮辱罪になります」 


亮「ジジツのテキジ?」 


須「事実の摘示。これこれこういう理由でこいつはこうである、という事実の摘示があるときは名誉毀損で、理由もなくあいつおかしい、とかあいつはオカマだ、というのは侮辱罪になります。」 


亮「でも区民センターでみだらなことはやってないですよ!(笑)」 


須「事実の摘示は、事実かどうかは問題にならないんです。」 


参「たとえばそれが事実だとしてもダメなんですか?」 


須「ダメです。より真実である方がまずいときもありますよね。社会的信用を下げるようなことが事実としてあるならば、それが真実であろうとなかろうと、それを言うというのは、その人の社会的信用にかかわりますよね。」 


参「それを言うぞ、というのは恐喝ですか?」 


須「言うぞ!だけなら脅迫、言うぞ!だから言われたくなければ金を出せ!は恐喝です。」 


参「名誉毀損と侮辱罪ではどっちが罪が重いとかあるんですか?」 


須「名誉毀損の方が重いです。懲役があります。侮辱は拘留っていう、ちょっと身柄を置くというのはあります。 でも、これぐらいなら処罰するほどではないな、というときは起訴猶予になったりもしますよ。」



次回へ続く!