2017年9月5日火曜日

8月GPS「弁護士さんに聴いてみよう!」後編

亮佑です!この前のバーベキューに来てくれたみなさん、
ありがとうございました!35人参加!ってことで大変盛り上がりました。

えーこの前のバーベキューの報告は少し後にしまして、
この前8月GPSの「弁護士さんに聴いてみよう!」の後編をお送りします。
お読みください〜!


〜〜〜〜〜


ゲイであることで、職場で立場が悪くなったら…? 



亮佑(亮)「職場でゲイであることを理由にして、あからさまに差別をされるわけではないんだけども、昇進できないとか立場が悪くなるってことがあったら、どうしたらいいんでしょうか。」 


須田弁護士(須)「人事ってむずかしいんですよね。差別意識が根底にあってもそれを理由にしないんですよね。例えば、あなたは欠席が多かったですよね、とか、違う理由を言われてしまうので。  
 ただ、同期と同じかそれ以上の成績を上げているのに、なんであいつだけ課長になってるの?というような、明らかな差があるときは、争うことができると思います。  
 労働者の環境は争いやすくなっているので、まずは会社の人事に『今回の人事はおかしい』という話をして、協議ができれば一番いいですね。  
 ただ、たとえば社長が人事部長みたいな(笑)小さい会社ってありますよね。社長の一存で決まるっていうような環境。そういうで真正面から争いたくないというときは、第三者を入れて話し合うこともできます。  
 ほかにもいくつも使える資源があります。たとえば労働局の労働相談ですね。単に相談してこうしたらいいよ、とアドバイスをくれるだけではなくて、直接会社に対して『差別的な扱いをしてはダメだよ』と行政指導をしてくれます。  
 あと道がやっている、北海道労働委員会、ここでは『個別労使紛争の斡旋(あっせん)』というのをやってます。」 


亮「いろいろあるんですね。  
 …でもこういうところが、みんながみんな、ゲイに理解があるわけではないじゃないですか…。」 


須「自分の言い分を聞いてもらおうと思ったら、代理人(弁護士)をつけて、自分の弁護士に話をしてもらう方がいいと思います。北海道の労働委員会でもいいし、労働審判とか民事調停とか、裁判所の手続きのなかでもいいです。自分の話を聞いてくれるかどうかを見てから代理人をつけるかを決めてもいいですよ。」 


亮「代理人をつけなくても大丈夫そうなものですか?」


須「労働委員会はつけなくてもいいですが、裁判所の手続きの時は、弁護士つけた方がいいです。煩雑で短期間でやらないといけないことが多いんですよね。  
 なので、手続きの選択のためにも一度弁護士に相談してもらったらいいと思います。」 


亮「須田先生に相談しても?(笑)」


須「大丈夫ですよ(笑)」



既婚男性とセックスして奥さんから慰謝料請求?? 





亮「ここからは、GPSに参加してくれてるみんなから、事前に質問をもらったのを紹介します。
 『ゲイの人が、既婚男性と肉体関係を持ったことが奥さんに知られて、慰謝料請求をされたときに、裁判所で認められる可能性はあるんでしょうか?』」 


須「これがですねぇ…正面から争ったものを見たことがなくてですね(笑)。  
 ただ担当した事件で、妻が他の女性と関係を持ったので、夫から慰謝料請求をされたっていう件がありました。」 


亮「既婚女性と他の女性が関係を持ったんですね。」 


須「そうです。でもこのときは関係を持っただけじゃなくて、妻が女性と暮らしたいからあなたとは離婚したいと言った、ということだったんです。  
 同性と性的行為をしたというだけでは、不貞慰謝料を請求するのは難しいと思います。でも、これによって『家庭が壊れた』ということがあれば、認められることはあるかもしれないし、実際に認められているものもあります。」 


亮「では、同性と性的関係を持っただけだと、慰謝料請求が認められることは少ないと。」 


須「今の裁判所の考え方だと、わりと低めだと思います。  
 ただ対応によると思います。慰謝料請求などの裁判は、個別の裁判官の『それはかわいそうだ…』という気持ちもけっこう影響するんですよね(笑)」 


亮「では、裁判官に対して『私、こんなになってしまってすごくかわいそう…家庭も壊されて…』みたいな、悲劇のヒロイン的な感じを出した方がいいんでしょうか?(笑)」 


須「いえ、単なる感情じゃなくて(笑)やってることのひどさが問題です。  
 全然家に帰ってこないとか、奥さんに『お前よりあいつのほうが好きだ』とか面と向かって言っているとか、そういう状況なら『奥さんの慰謝料請求を、認めてあげないとかわいそうだね』っていう価値判断にかたよりがちだと思いますねぇ。」


参加者(参)「それは、性的交渉があってもなくても同じですか?」 


須「いや、性的交渉はないと、なかなか認められないと思います。  
 例えばゲイの人が既婚男性から勝手に好かれて『わたしは既婚者だと思って断ってましたよ』という状況なのに、慰謝料請求されてもイヤですよね。  
 なので『あなたがこういう関係になってるから、こういう結果になってるんでしょう』、という、責任を負わせられるような、何かしらの行為はないとダメだと思います。」 


亮「じゃ、裁判所はそういう具体的な行動は、かなり細かく見るということなんですね。」 


須「そうです。ひとつひとつの行動の積み重ねです。そういう時の訴状ってすごいですよ〜ドロドロしてて〜(笑)」 



ゲイカップルが別れる時も慰謝料請求できる? 




亮「『ゲイカップルで、どちらかの不貞行為で別れる場合、慰謝料や財産分与の請求を裁判所が認めることがありますか。  
 長くつきあっててパートナーシップ制度も利用してる。そういう場合、同性間でも認められますか?』」


須「認めることは、今のままでは、ないと思います。」 


亮「パートナーシップ制度は、法的効力が何もないですもんね。」 


須「そうです。
 不貞行為が離婚原因になりうるのは、民法でそのように定められてるからなんですよね。2人の間に何の合意がなくても、民法で決まってるから、そのように慰謝料を払わされるわけです。  
 でも同性婚が法的に認められていないので、その法律効果を生む根拠がないんですよ。財産分与とか不貞慰謝料とかの話をするための基礎が、そもそもないんです。  
 だから、今のままでは認められないです。」 


亮「ですよね。」


須「でも、その基礎を作り出すことはできます。双方の合意で。」 


亮「合意で。契約ですか?」


須「そうです。  
 たとえば私と彼女が同性カップルとして、パートナーシップ宣誓をしたとします。  
 死ぬまで一緒にいるつもりでこれからの人生設計を作るから、万が一あなたの浮気で別れることになった場合は、慰謝料を200万円払ってもらうよ、っていう約束をしておくことができます。  
 その約束を公正証書とかにしていたら、もし別れて相手が払うのをいやがっても、強制執行もできます。」 


亮「え!200万円、払わされるんですか?」 


須「払わされます。だって自分で約束したんですもん。  
 合意は守らなければ。契約は履行されなくてはいけないというのが、司法の大原則です。」 


亮「同性婚を反対している当事者っていますよね。契約はイヤ、俺は遊びたい、みたいな。でもそれって別に同性婚ができても、結婚しなきゃいいだけの話ですよねぇ。」


須「そうなんですよ。遊びたい人は婚姻を選ばなきゃ良いだけの話で。今だって恋愛自由市場に裁判所は何も介入しません。彼氏が浮気した彼女が怒っても、彼にはなんの慰謝料請求はできないんですよ。婚姻によって慰謝料請求の根拠が初めて生まれるんです。  
 だから反対したい人ってのは、あなたは結婚を選択しなくていいだけでしょ、他の人が結婚したいのに反対しなくて良いでしょ、って私は思います。」 


亮「ですよね〜。」


須「財産分与も同じです。  
 カップルが合意して、たとえば通帳を一つにして生計を管理するとします。もし別れることになったら、二人で築いた財産については、二分の一を原則にして最後に分けましょう、ということを合意しておくことができます。そしたら、別れる時に半分ずつ財産を分けることができます。  
 そして、それをもし相手がやってくれなかったら、民法上の債務不履行として、契約を守らなかったとして、損害賠償を請求できるようになります。」 


参「その契約書を作るときは、須田先生に相談した方がいいんでしょうか?」 


亮「行政書士に頼むんでしたっけ?」 


須「誰でも良いんです。自分たちで書いても一応有効です。ホントは紙にする前にどこかでちゃんと弁護士に見てもらった方が良いと思います。弁護士なら、万が一訴訟になったときのことを考えて作りますので。」 


参「どれぐらいの金額でできるんですか?」 


須「普通は相談料として、ということになります。  
 相談料もひところ30分5千円というのが一人歩きしてましたけど、ばらばらです。私の事務所は、規定として1時間5千円ですし、初回の相談はタダという所もあります。事務所のホームページに載せてるところもありますから、確認していただいたらと思います。」


参「先に約束を交わしていなくて、同居を解消することになったときに、生活に不利益が生じるから、その分を補填してほしい、という形で請求することはできないんですか?」


須「基本的にはできないです。合意がないんですもんね。合意はないし、請求するための法的な地位もないから、できないと思います。」 


亮「逆に言えば、同性婚はないけども、契約によって、それに準じた形に近づけることはできなくはない、ということなんでしょうか?」 


須「たぶんこの辺を考えて、東京の渋谷区のパートナーシップ制度は、証明を出すために、公正証書を二つ作れと言ってるんです。  
 1つは任意後見と言って、将来自分が財産管理ができないときにこの人に任せます、という書類。もう1つは、もし別れた時の精算方法も決めて、相互の協力して一緒に暮らしますという書類。渋谷区は、この2つを作らないととパートナーシップ証明は出さないと言ってるんです。婚姻と同じ効果を、合意で作りなさいと。  
 でもこれはハードルが高くて、みんな使うのに躊躇したので、世田谷から札幌まで、ぜんぶその方式はとらなかったんです。公正証書を作るとなると何万もかかるので。」 


亮「そんなにかかるんですか?」


須「公正証書、けっこう高いんですよ。」 


亮「札幌市は、戸籍謄本と独身証明書、独身を証明する書類ってのを出すんですよね。」 


参「へぇ~」 


亮「独身証明書ってものがなんであるかっていうと、紹介サービスってあるじゃない?結婚相手を探すやつ。そこに登録する時に、独身であることを証明するためにその書類を提出するんだって。全然ゲイには関係ないですけど(笑)。」




同性同士が婚姻できないという根拠は? 





亮「最後。『同性同士が婚姻できないという根拠は何ですか。  
 民法731条の【婚姻の成立】のところには、同性同士は婚姻できないとは書いてないですが』というご質問です。」 


須「そうですね。結婚に関する法律だと、民法と戸籍法が関係しますが、どこにも同性同士は婚姻できないとは書いてないんですよ。  
 婚姻障害事由という、こんな場合は婚姻してはいけないというのが決まってます。たとえば一定の年齢以上じゃないとできない、とか、重婚はできない、とか。でもそこに、同性であることというのは明記されてないんです。  
 ここだけ見ると同性同士でも婚姻できそうですが、民法も戸籍法も使っている言葉が『夫婦』『夫』『妻』なので、解釈上男女だけを想定していると言われています。今の法律では同性同士の婚姻はできないとされています」 


亮「たとえば、役所に同性同士の婚姻届を出しに行っても、不受理になると思うんですけど、その根拠ってのはなんでしょう?」


須「そもそも受理しない理由を書いてないと思うんですよね。受理しません、終わりだと思うんですけど。」 


参「突き返されるんですか?」 


亮「出して内部で検討して断られる、というのではなくて、受付に出して『いやこれは受け取れません』みたいな感じなんでしょうかね。  
 一回みんなで婚姻届出しに行ったらいいですよね(笑)。いや、実はこれは、同性婚を進める方法として考えられてるんですよね。全国で何百組という同性カップルが婚姻届を出しに行って、みんな不受理になって裁判を起こすという。」 


須「そうですね。行政の不受理という作用、これが違憲であると主張しないと、裁判は起こせないんです。なので、一回婚姻届を出すことが必要なんですよね。」 


参「根拠が必要だと言うことですか?」 


須「何を争っているかという根拠がいるんです。『同性同士で結婚できないのって、おかしいよね』と言っているだけでは争えないですよね。  
 私たちが何月何日に、この人と出した婚姻届が不受理とした決定、これ自体が違憲である、という争い方になると思います。」 


参「違憲訴訟を起こすと、最高裁の大法廷まで行くと思うんですが、原告が敗訴した場合、違憲訴訟をまた起こすことはできるんですか?」 


須「憲法解釈というのは時代によってどんどん変わります。一回、最高裁がダメといったものでも、何十年後かにOKになったりするんです。  
 たとえば最近なら、非嫡出子(ひちゃくしゅつし)、婚姻している夫と妻の間の子ども『ではない』子どもが遺産を相続する時に、婚姻している夫婦の子どもの半分だったんです。少なかったんですね。  
 で、これが差別、違憲であるという裁判は、何回も起こされてたんですが、ずっと合憲という判決だったんです。でも、何年か前に違憲判決が出て、民法も改正されました。今は、婚姻している夫婦間の子どもと相続分は同じになっています。  
 なので、一回違憲判決が出たらダメというわけではなくて、本当は何回もチャレンジすればいいと思うんです。  
 でも、日本では同性同士の婚姻ができないことが違憲である、という訴訟は起こされたことがないんです。」 


亮「今のところは訴訟が起こされてないということなんですねー。」


須「そうですねぇ。  
 あと、質問していただいた方から、たとえばアメリカで同性婚が認められたり、台湾で同性婚を認めないのが違憲であるという判決が出たりとかありましたよね。『そういう世界情勢は、判決に影響しますか?』というのがありました。  
 答えとしては、影響はありうるし、裁判官もそういう情勢を考慮するとは思いますが、それで判決が変わるかどうかは、むずかしいのではないか、というのが私の意見です。  
 私たちも、同性婚については、いきなり訴訟を起こして最高裁まで争う、というところには目標を置いてないんです。  
 今は、日本弁護士連合会の人権救済の申し立てというのをしています。弁護士はそもそも『基本的人権の擁護と社会正義の実現のために働きなさい』と、弁護士法第一条に書いてあるんです。なので、日本の弁護士全体としてこんな人権侵害された状況がおかしい、という申し入れをしてほしい、という活動をしています。  
 最高裁は頭が固いと思うので、簡単には変わらないと思ってるんですが、日弁連レベルなら、変えられるんじゃないかと思っています。」 




危険ドラッグにうっかりふれてしまったら… 





亮「いただいてた質問はこれで終わりなんですが、もしみなさんから、聴いてみたいことがあればどうぞ。」 


参「危険ドラッグのことなんですけど、自分が所持してなくても、相手の家に行った時に相手が使ってて、自分が間接的にふれることになったら、どうなんでしょうか?」 


須「危険ドラッグがどのように処罰の対象になるかの話をする前に、処罰の対象になる犯罪には、『故意犯』と『過失犯』というのがあるんですね。  
 わざとこれをやろうと思ったことで処罰されるものは『故意犯』、うっかりそうなっちゃったけど処罰されるものが『過失犯』です。『過失犯』の一番わかりやすい例は、自動車運転過失ですね。交通事故を起こしたいと思ってる人は誰もいませんから。  
 それで、薬物犯というのは、全部『故意犯』なんです。だから、薬物を使おうと思って使ってら処罰されます。  
 いつのまにか、けむりのようなものを吸っちゃったかも、というのは、そもそも犯罪の行為がないので、処罰できないんです。  
 ただ、犯罪の行為がないということを証明するのはむずかしいんです。けっこうまきこまれ犯罪はあります。  
 私、薬物関係で逮捕された人に会いに行ったんです。まわりの人がラリってるパーティに参加してですね(笑)。」 


亮「ラリってるパーティですか(笑)。」


須「ええ。そういうパーティに参加して、確かにおかしなニオイがするなと思った、でもヤバい薬だという確信もなかったって言ってたんですね。でも実際には、そのおかしなニオイは薬物だったんです。  
 それで私は『故意犯ではないから、争おうと思ったら争えると思う。でもそれを証明してくれる人は誰もいないし、いま、認めたら出られる。でも争うなら一緒に争うよ』って言ったんです。  
 でも、その人は結局、『自分の中で、ちょっとヤバいかな、とは思ってました』って言って、認めたんですよね。まぁ、前科がない人だったし、執行猶予が付くだろうし、じゃ、認めて出ようかって言って出たんです。  
 全部言って出てきて、だからこういうところに近づかないでね!って言いました。  
 とにかく、こういうところには近づかないのが一番です!(笑)」 


亮「(笑)近づかないのが一番!ということで、よろしいでしょうか?  
 というわけで、なにかあったらぜひ、須田先生に相談していただいたらと思います。直接連絡できない人は亮佑経由でも大丈夫ですよ。  
 今日は須田先生、ありがとうございました!!」


(拍手)